赤ちゃんの腸内環境ってどうやって決まるの?
人間の腸には、様々な種類の細菌が数多く住んでいますが、どのような菌が住み着いているかは人によって異なります。
また、人の摂取した食べ物を栄養素として細菌は増えるので、私たちが普段どのようなものを食べるかによって腸内環境は変わるのです。
大人には腸に限らず、体外、体内に多くの細菌が存在していますが、実はこれらの菌ははじめからいたわけではありません。
経膣分娩で生まれてくる際には、赤ちゃんは初めて母親の持つ細菌と出会うのです。
その後は、様々な細菌と接触することで腸内環境は変化していき、徐々に大人のような腸内環境に変化していきます。
そして、赤ちゃんの腸内環境に影響を与えるものの1つに母乳があります。
この記事では、母乳が赤ちゃんの腸内環境に与える影響について説明します。
母乳が赤ちゃんの腸内環境に影響を与える?
赤ちゃんに限らず腸内環境を良い方向へ導く1つのポイントはプレバイオティクスです。
プレバイオティクスとは、人の消化器官では消化、吸収されずに腸内に届くことによって人間にとって有益な菌の増殖をサポートして腸内フローラを良好な状態に保つのを手助けする成分のことです。
食物繊維などがプレバイオティクスの食品の1例としてあげられます。
母乳にはミルクオリゴ糖(ラクチュロース)と言うオリゴ糖の1種が含まれており、腸内環境を良好に保つのに効果的であると言われています。
乳幼児は、母親の母乳を通して、母親の持つ細菌とともに、ミルクオリゴ糖を受け取ることができるのです。
理想的な腸内環境にはビフィズス菌が多い?
腸内には様々な細菌が存在していますが、人にとって有益なものを善玉菌、悪影響を持つものを悪玉菌、どちらでもないものを日和見菌と分類できます。
意外かもしれませんが、腸内フローラのほとんどは日和見菌で、善玉菌の占める割合は1割、2割程度だと言われています。
日和見菌は一定数の善玉菌がいる環境では悪さはしませんが、悪玉菌が増える、もしくは善玉菌が減少するなどの環境の変化があった場合には悪玉菌のような働きをし始めます。
このような状況を防ぐには、善玉菌を増やすためにビフィズス菌などの有用菌を摂取する、善玉菌が増えるのを助けるプレバイオティクス食品をとることが大切です。
善玉菌の割合以外にも重要なことがあり、それは腸内細菌の多様性です。
細菌の集まりのことをマイクロバイオータといい、そのマイクロバイオータが持つ遺伝子群のことをマイクロバイオームと言います。
実は、ヒト・マイクロバイオームの遺伝子量は人間自体の遺伝子量よりも多いということが分かっています。
マイクロバイオータの多様性が高いことが、健康と密接に関わっていると言われており、様々な研究がなされています。
マイクロバイオータは赤ちゃんの時に大きく変化する?
マイクロバイオータは常に一定ではなく、私たちの選択によって影響を受けています。
その大きな要因の1つは食べ物です。
食べるものが偏っているとそれらの栄養を好む菌が増えていく一方で、その他の菌は数を減らす、悪い場合には絶滅する危険性もあります。
マイクロバイオータは赤ちゃんの時に大きく変化する時期があります。
それは、生まれてから6ヶ月程度が経ち、離乳期になり固形食を初めて口にするタイミングです。
これまでの母乳から、植物性の離乳食などに変わることで乳幼児のマイクロバイオータの多様性が大きく変化すると言われています。
ピューレ状のニンジンやブロッコリーなどの離乳食から、徐々に大人と同じような食事をするようになっていきますが、この時に重要なのは普段の私たちの食事を見直すことです。
大人と同じものを食べられるようになっても、その食事が偏ったものであれば健康的なマイクロバイオータの形成は難しいでしょう。
腸内細菌の餌になる食物繊維が不足してはいないか、乳酸菌やビフィズス菌を含むヨーグルトや発酵食品を摂っているかを考え直すことが大切になります。
粉ミルクにはデメリットが多いの?
乳児期に母乳を与えることには大きなメリットがありますが、粉ミルクがまったくダメというわけではありません。
粉ミルクであれば母親だけでなく、父親も作ることができますし、母乳が出にくいお母さんの場合でも適切な量をしっかりと与えることができます。
最近では粉ミルクに、プレバイオティクス、プロバイオティクスを加えたものもあるので、専門の小児科医に相談するのが良いでしょう。
しかし、母乳に含まれる成分が具体的にどのように乳児の健康的なマイクロバイオータの形成に関わっているかは未だ明らかになっていない部分が多くあります。
母乳の果たす栄養面以外の役割にも目を向けると同時に、私たちが摂っている普段の食事が腸内細菌にとって良いものかどうかも気にかけることが重要になります。