ヨーグルトの歴史|誕生はいつ?
当時のヨーグルトと、現在家庭で食べられているものとは多少違いがあるかもしれませんが、ヨーグルトが誕生したのはおよそ1万年前頃と言われています。
実は、ヨーグルトの誕生は、牧畜の歴史と深く関係しており、世界中の様々な気候や風土に合わせて、いろいろな種類のヨーグルトが生まれ、親しまれています。
どのようにしてヨーグルトが生まれ、日本でも広まって行ったのかについてまとめました。
目次
ヨーグルトの歴史|発酵乳の誕生
ヨーグルトが1万年前に誕生した、と言いましたが、厳密にはヨーグルトではなく発酵乳(動物の乳を乳酸菌などの菌が発酵させたもの)がその頃に生まれたと言われています。
もともとは狩りによって動物の肉などを得ていましたが、1万2千年前頃から家畜や穀類を育てることで、より安定的に食料を確保するようになってきました。
そして、牛や羊、馬などの家畜は、時にはその肉や皮を利用するとともに、栄養豊かな乳を取ることができる動物として重宝されてきました。
しかし、現在の牛乳と同じように、動物の乳は品質の劣化、腐敗が早く長期間の保存はできませんでした。
そのため、搾乳したものを容器に入れておくと、早い段階で腐敗が始まってしまっていたのですが、容器にたまたま乳酸菌などの菌が入り込んだことによって乳酸発酵が始まり、とろみと酸味のあるものに変化したのが発酵乳の始まりと言われています。
乳酸菌が発酵を進めることで、腐敗を進める菌は増殖できない環境になるので、牛乳などよりも長い期間保存することができる食品が生まれたわけです。
発酵乳の世界中への広まり
発酵乳がいつ、どこで生まれたかについての正確な場所や年代はわかっていません。
しかし、発酵乳は西アジアから中央アジアのあたりで生まれ、土地によって利用される動物の乳や乳酸菌の種類が異なるため、地域によって独特のヨーグルトが生まれていったのだと考えられています。
ヨーグルトの語源は?
ヨーグルトと言う言葉の語源についても諸説あります。
一説には、古代トルコの遊牧民が発酵乳を「yugurt」(ユーグルト)と言っていたことや、トルコ語で攪拌すると言う意味の「yogurmak」が由来と言われています。
また、一説には酸味や力強いと言う意味のブルガリア語が由来であるとも言われています。
ヨーグルトが日本で広まったのはいつ?
ヨーグルトの原型とも言えるものが生まれて、世界中に広まっていったのはかなり昔のことですが、日本においてヨーグルトが広まったのは割と最近になってのことです。
まずは、動物の乳を絞る搾乳の技術が日本に伝わったのは、飛鳥時代(592年〜710年)の頃です。
朝鮮半島から仏教とともに、搾乳の技術が伝わり酪(らく)、酥(そ)、醍醐(だいご)などの乳製品が作られるようになってきました。
厳密に酪、酥、醍醐がどういうものであったかは製法などが失われていることも多いため再現は簡単ではないようですが、酪は牛乳などを発酵させた酸味のある飲料、酥は牛乳などを煮詰めたもの、醍醐は牛乳を加工して酸味、甘味をもたせたものなので、現在のヨーグルトやバターなどに近いものだと考えられます。
当時から栄養価の高い食品として考えられていたため、皇族・貴族を中心に薬として広まりました。
現在、家庭で親しまれている形のヨーグルトが日本で広がったのは、明治〜昭和なので、かなり最近のことです。
日本では、コンビニ、スーパーなどで様々な種類のヨーグルトを購入することができますが、これは乳酸菌と健康の関係についての研究が進んだことにより、ヨーグルトのパワーについて多くの人が注目したためと言えるでしょう。
日本でヨーグルトの販売を始めたチチヤス
牛乳事業の会社として始まったチチヤスは、大正6年(1917年)にヨーグルトの販売を日本の業界で始めて行いました。
その後、1950年頃に明治乳業が工場でヨーグルトを生産するようになり、他社も生産を進めることで家庭に広まっていきました。
発売当時は、現在のようなプラスチックや紙パックの容器ではなく、牛乳瓶に入ったハードタイプというゼラチンで固めたヨーグルトが売られていました。
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ヨーグルト研究を進めたメチニコフ
メチニコフはロシア生まれの細菌の研究者で、1908年にノーベル生理学・医学賞を食菌作用の研究で受賞しています。
彼は、ブルガリアに住む人々が長寿なのは、その地域で親しまれているヨーグルトが理由ではないかと考え、ヨーグルトに含まれるブルガリア菌の研究を進めることでヨーロッパでヨーグルトが広まっていったと言われています。
実際には、ブルガリア菌が長寿の理由というメチニコフの説は正しいとは言えない、というのが現在の認識です。
ブルガリア菌は、ヨーグルトから摂取しても私たちの腸内に住み着くことはないため、彼の考えは否定されましたが、さらに研究が進み乳酸菌は腸内に定住しなくても健康への効果があるのではないかと考えられ始めています。
ヨーグルトの歴史のまとめ
発酵乳は、農耕や牧畜が始まった約1万年前に、動物の乳を入れていた容器に乳酸菌などの菌が偶然に入り込むことで生まれました。
栄養価の高い動物の乳をより長い期間、保存することができると言うこともあり世界中に広がっていきます。
日本で発酵乳が作られるようになったのは、飛鳥時代に朝鮮半島から搾乳の方法が伝えられた後で、酪、酥、醍醐などの現在のヨーグルトやバターの原型などもその頃作られていたそうです。
現在のようにヨーグルトが広まった1つのには、乳酸菌の持つパワーに関する研究が進められてことが挙げられます。
そして、日本では明治初期にヨーグルトが一般に販売され、昭和に入って工場生産が進むことによって家庭でも広く親しまれるようになっていきました。